総務省によると、2014年の時点で超高速ブロードバンドの利用可能世帯率は99.9%になっています。これはほとんどどの家庭でもインターネットが使えるようになっているということです。IT化とかネット社会といった言葉がよく使われますが、インターネットは今や多くの人にとってなくてはならない存在ですよね。
でも一口にインターネットと言っても、ネット接続の種類と仕組みはいろいろとあります。すぐに思い浮かべるのは光回線を使ったものですが、中には従来の電話回線を使ったインターネットサービスもあります。
この記事では電話回線を使ったインターネット接続の種類と仕組みを解説したいと思います。
1.ダイヤルアップ・インターネット接続の仕組み
光回線を使ったネット接続やADSLインターネットが登場する前は、インターネットと言えば「ダイヤルアップ接続」が主流でした。この記事の読者の中にもこの方法でインターネットを使っていたという人は多いのではないでしょうか?
ダイヤルアップ接続はアナログ回線とデジタル回線(ISDN)の両方で利用できるネット接続方法です。今では光回線に完全に主役を奪われていますがまだ現役です。ちなみに携帯電話やPHSなどの無線回線でも利用できますが、ここでは有線回線であるアナログとデジタル回線に絞って見てみましょう。
ダイヤルアップ接続の仕組み(アナログ回線の場合)
アナログ回線でダイヤルアップ接続をするときは「(アナログ)モデム」と呼ばれる機械を使います。モデムはパソコンからのデジタル信号を音声信号に変換する機械で、変換された信号はアナログ回線を通ることができます。一方外部から送られてきた音声信号をデジタル信号に戻してパソコンに表示させる役割も果たします。
基本的にダイヤルアップ接続は電話と同じような仕組みです。ユーザーは「アクセスポイント」と呼ばれる電話番号に電話をかけてネット接続をします。番号を発信する時に「ピーヒョロロロ」という音がなるのが特徴的で、電話と同じく基本的に音声信号でやりとりされています。
電話とほぼ同じということは料金は接続している時間だけかかるということですが(「Aol」など定額プランも一部あり)、電話と違うのはインターネット接続サービスを行うプロバイダ料金もかかるという点です(ソフトバンクの「おとくライン」などプロバイダ料金がかからないサービスもある)。
ダイヤルアップ接続の仕組み(ISDN回線の場合)
ISDNはアナログ電話回線と同じく銅線を使って電話やネットサービスを提供しています。アナログ回線では「電話している時は電話だけ、FAXの時はFAXだけ、ダイヤルアップ接続する時はダイヤルアップ接続だけ」というように複数の音声データサービスを使えませんが、ISDNではデジタル信号を使うので電話とダイヤルアップ接続を同時に利用できるのが特徴です。
ISDNはアナログ回線と基本的に同じ仕組みでダイヤルアップ接続をしています。プロバイダに「電話をかけて」インターネットに接続します。ただしISDNでダイヤルアップ接続する場合は、アナログモデムの代わりに「TA(ターミナルアダプタ)」という機械を使うのが違いです。
2.ADSLインターネット接続の仕組み
ダイヤルアップ接続の次に台頭したのはADSLというインターネットの仕組みです。ADSLとは「Asymmetric Digital Subscriber Line(非対称デジタル加入者線)」という言葉の頭文字を取っていますが、これだと何のことかよく分からないですよね。
簡単に言えばADSLとはアナログ回線を使ったインターネット接続の方法です。ADSLを使えばISDNのように電話と同時にインターネットを使うこともできます。
アナログ回線でADSLと電話が併用できる理由
上記の説明を見て、「アナログ回線は複数のサービスは使えないんじゃないの?」と思う方も多いのではないでしょうか?確かにアナログ回線では通常1回線分のサービスしか使えません。ではなぜADSLは電話と併用できるかというと、実はアナログ回線で「使われていない周波数帯」を使って通信するからです。
例えで考えましょう。同じ道路に車用の車線と自転車用の車線が1車線ずつ並行しているところを想像してください。車は自転車用車線を使えませんが、自転車は使えますよね。タクシーや乗用車など同じカテゴリーの車は並走できなくても、車両タイプが違う自転車はOKです。
それと同じようにFAXやダイヤルアップ接続は無理でも、ADSLでは通信タイプが違うのでアナログ電話回線でも電話と同時に使えるのです。
まだまだ現役のADSL
光回線が普及しているので、ADSLもダイヤルアップ接続と同じように現在はネット世界の主役ではなくなっています。2025年にアナログ回線やISDNが廃止されるので、新規受付を終了しているプロバイダもあります。
しかし今でもADSLは現役です。月額料金が1000円ちょっとしかかからないプロバイダがある上に、光回線と違って電話回線が通っていれば工事が不要です。また電話回線というインフラを使うのでカバーエリアが広く、光回線のないような田舎でも利用できます。
3 .今は光インターネットが主役!
ダイヤルアップ接続やADSLを抑えて現在の主なインターネット接続手段になっているのが光回線です。光回線では光ファイバーという素材を使って、データを光で転送しています。「光=速い」というイメージを持っている人は多いのではないでしょうか。そのイメージ通り光回線は圧倒的なスピードでデータのやりとりができるのが特徴です。
光回線のメリット
光回線のメリットには以下のような点が挙げられます。
- 高速通信ができる
- アナログ回線よりも基本料金が安い
- 通話料も安い
- 音質が良い
光回線を使ったインターネットはダウンロード速度1Gbpsという超高速通信ができます(アナログ回線のダイヤルアップ接続は下り最速56kbpsほどと約17850分の1の速度)。
アナログ回線では1450~1950円ほどの基本料金ですが光電話では500円くらいしかかかりません。
アナログ電話だと県外への電話は1分あたり数十円~100円以上かかってしまいますが、光電話は距離に関係なく3分8円しかかかりません(フレッツ光のサービスの場合)。
高速通信ができるため音声通話のクオリティがアナログ電話よりも上です。
光回線のデメリット
光回線のデメリットには以下のようなものがあります。
- 一部の番号にかけられない
- 停電時に使えない
時報や天気予報などのおなじみの番号につながらないことがあります。
光電話の利用には様々な装置が必要なので停電してしまうとそこで終わりです。
4.まとめ
従来の電話回線を使ったインターネット接続の種類と仕組みを見てきました。ダイヤルアップ接続やADSLでインターネットに接続した時代を昔懐かしく思う人も多いのではないでしょうか?これらの接続方法はまだまだ現役とはいえ、近い将来サービス終了することが予想されます。
そのため今後長くネット接続をする場合は、光回線やWiMAXなどの無線回線を考えると良いでしょう。ただし一時的にネットを使いたい方やあと数年だけ使いたい場合は、ダイヤルアップ接続やADSLも選択肢の一つになります。